2009年4月アーカイブ

新年度がスタートして早一月。故池田太郎先生の名著のひとつ「めぐりあい、ひびきあい、はえあいの教育」からタイトルをお借りしました。偶然ともいえる<めぐりあい>がくれた勇気や元気や考えるヒント、そんな<ひびきあい>を契機に、お互いの得意なところをのばし、苦手なところをおぎないあう<はえあい>の関係へ。WEコラボ2009の準備、元気に進行中です。

 

1.<まど・みちお>さんがくれたさわやかな勇気

 「ぞう-さん、ぞう-さん、お-はなが長いのね・・・」の「ぞうさん」や「やぎさん ゆうびん」など幼い頃に聴き、幼い我が子と歌った童謡作家が<まど・みちお>さんという詩人で、今年の秋に100歳の誕生日を迎えられ、昨年秋には漢字がもう書けないといって、ひらがなとカタカナだけの新作原稿を出版社におくっている方だとはつゆしらず。先日、妻に誘われてまどさんの展覧会に行き、衝撃と共にさわやかな勇気をいただいた思いでいます。

MADOMICHIO.jpg 

銀座教文館9Fホールの「まどさん100歳展」会場。 いそべとし記念男声合唱団によるミニ童謡コンサートに偶然めぐりあいました。久しぶりに優しい気持ちになって、まど・みちおさんの詩や抽象画、挿絵をくまなく見ていくうちに、次の作品のまえでハタ、と立ち止まってしまいました。

       

       かいだん(1)

      この うつくしい いすに

      いつも 空気が

      こしかけて います

      そして たのしそうに

      算数を

      かんがえて います

 

    (初出・底本『てんぷらぴりぴり』1968、大日本図書)

 

 小生は学校のいす、早朝の、まだ児童生徒がやってこない教室を思い浮かべます。そしてこんなさわやかな空気を登校してきた児童生徒が一杯に吸い込み、今度は自分たちが楽しく算数を考える。WEコラボのミッションは、そんな情景を可能にする生活の応援、発達の応援です。現在、本学の研究チームですすめているスクールソーシャルワーク支援モデル研究では、先生方が「授業で勝負」と言い切れるような<子どもの問題>支援システムを想定しています。

 そうそう、もう一つのエピソード。まどさんが書かれた昨年秋の手書き原稿~ひらがなとカタカナ~は達観とも自在ともいえる内容でしたが、その前に凛とたたずみ、鋭い眼差しを投げかけていた谷川俊太郎さんの若々しい立ち姿とモードからも、本当に元気をいただきました。

 

2.<縁を結ぶ会>に学ぶコラボレーションの技

 毎年4月末に開催される大熊由紀子さん主宰<縁を結ぶ会>は肩書きではなく、ひびきあう人々の集いです。今年もまた偶然に、お元気そうな花田春兆さんと同じテーブルにつき、午後2コマ分の鼎談や実践報告に聞き入りながら、「あー、無心になって学ぼうとすることこそコラボレーションの技だなぁ」との感慨を深めていました。

 

  ENISHINOKAI2009.jpg 

第2部「さまざまな挑戦」の中で報告される早瀬久美さん。日本初の聾の薬剤師として、昭和大学病院聴覚障害者外来の仕組みを構築されたとのこと。ご主人の早瀬憲太郎さんも聾者で、全日本ろうあ連盟創立60周年記念映画「ゆずり葉」のメガホンをとられました。久美さんの報告後、映画のプロモーションビデオが上映され、遅まきながらSPEEDの今井絵理子さんのお子さんに聴覚障害があることを知った次第です。

毎年恒例のチャレンジャー報告はその他にも医療事故を隠さない病院経営の内野直樹さん、ICT活用による在宅医療システムを構築した中野一司さん、いま話題の当事者研究者・綾屋紗月&熊谷晋一郎さん、元気のでるがん対策予算提案書をとりまとめた埴岡健一さん、と多様ですが、共通項はまさに皆<コラボレーター>であるということでした。 

 

 WEコラボ研究のキーワードの一つ<個別支援計画>は、教育分野、福祉分野それぞれで制度化が進みつつありますが、その進んだ分だけ制度設計上の違いが以前よりも目立つようになってきました。だからこそ今、理念としての<個別支援計画>がめざす目標とその達成のためのコラボレーションの重要性を振り返り、それぞれの守備範囲・長所・短所を整理して<はえあう>関係を築きたいものです。ゆめゆめ、違いだけが強調されたり、それぞれがそっぼを向くことがありませんように。

                

gakugei_green_2009.jpg大学は桜色から新緑一色に衣替えです。

 

ところで、GWはいかがお過ごしでしょうか。

小生は2勝3敗と負け越している息子との渓流釣り合戦がメインとなりそうです。多忙な時こそ、何とか時間を作り出して、普段の関係を紡ぎ直すことも大切なコラボレーションですね。

では、また、GW空けにお会いしましょう。

◎ウェブページ<ようこそ加瀬研究室へ>新設しました!

 主に卒論・修論等を紹介していきます。まだタイトルだけのものがほとんどですが、抄録を順次アップしていく予定です。ご指摘等いただける場合にはWEコラボアドレスまでお願いいたします。

 WEコラボ・メールアドレス  →   wewewe@u-gakugei.ac.jp

 

 

gakugei_2009_spring1.jpg東京学芸大学は本日4/3が入学式。

このところの花冷えが功を奏して(?)、桜が6分咲きでスタートです。

温暖化の影響でしょうか、桜といえば卒業式と入学式の合間に咲ききってしまう印象を持っていましたが、今年はほどよい咲き加減です。

学校・福祉系事業所・官庁・会社etc......それぞれスタートをきった「新入生」の皆さん、おめでとうございます。

 

あらためて想う<ホスト・センター>づくりということ

 <WE(ウィ)コラボとは何ですか?一言で説明してください。>

 こう問われたとしたら、「日本なりの<ホスト・センター>をつくること」と答えることにしています。ここでいうホスト・センターとは次のようにイメージされるものです。

・子どもの出生段階から家族に寄り添う<パーソナル・マネジャー>を専門職として擁している。

・このマネジャーが本人と家族支援のためのコア・チームを形成しつつ、必要に応じながら一定の権限をもって教育・福祉・医療・労働等の関係者を招集して個別支援会議を適宜開催していく。

・策定された<個別支援計画>の実施・モニタリング・評価に必要な外部機関と連携・協働し、<個別支援計画>のバックアップ管理や継承も本務とする。

・センターは建物よりも機能を重視し、地方自治体の特性に合わせた形で柔軟に設計できるが、財政基盤については国・都道府県・市町村が必要十分に確保する。

 新年度を迎えるにあたり、やはりこの想いはかわらないことを確認しておきたいと思います。長野チームが見せてくれた障害者総合相談支援センターを核とする就学支援、滋賀チームが見せてくれた相談支援ネットを基盤とする現行制度から漏れやすい対象者の支援など、2008年度研究を通して「容易くはないが、きっと可能であるという確信」を強めてきました。昨日は滋賀チームから「甲賀市に発達支援室が開設されました!」との朗報もあり、まさに日本なりの<ホスト・センター>づくりが進んでいることを肌で感じています。

 ところで、こうした発想、つまり本人を中心において支援ネットワークのコアとなるものをしっかりと造りこむ、という考え方を勇気づけてくれる提言を目にするようになってきました。

 例えば斉藤環さん(精神科医・『社会的ひきこもり(PHP新書)』著者)が書かれた毎日新聞コラム「時代の風」2009年3月15日には次のような一節があります。

 「そもそも「青少年問題」とは、教育、福祉、医療、経済など多領域の専門家が、タテ割りの垣根を越え、連携しながら対応にあたるべき問題である。・・・(中略)・・・EU(欧州連合)諸国の「青少年省」のように、継続的に青少年対策にあたる省庁の設置を、そろそろ真剣に検討すべきではないか。」

 小生も"無謀と思われるかも知れないが、消費者庁の次は子ども庁か子ども省。そこが文科省と厚労省をつないでホスト・センターをバックアップすべきだ。"などと嘯いていましたが、おっと、勉強不足を痛感です。

 あるいは阿部彩さん(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長)の『子どもの貧困-日本の不公平を考える(岩波新書)』です。その提言の一つにはこう書かれていました。

 「(子ども対策としての)政策の対象を、「世帯」から「子ども」に移し、子どものある世帯に対する政策を一本化した「子ども対策」を打ち出し、すべての子どものウェル・ビーイングを向上するという理念を訴えたい。」

 その通り!と強く強く首肯したところです。

 WEコラボ2009、小生も今一度襟を正して取り組む所存です。今年度もどうぞよろしくお願いいたします。